中川昭一氏の死亡に衝撃を受けている。
フランスでは大臣の酩酊フィルムを流さなかった”事件”があったばかりだけに余計に残念でたまらないし、中川氏をさんざ標的にして批判して面白がっていた一部メディアにも同業者として怒りを覚える。
”事件”を報じたのは、スッパ抜きで有名な週刊紙(誌ではない)「カナール・アンシェネ」。9月16日付けで報じたところによると、ボルロー持続開発・エコロジー・エネルギー相が同3日のエリゼ宮(仏大統領府)でのレセプションで演説する予定だったが、急きょ、取り消しになった。このレセプションを唯一、取材に行った国営テレビ、フランス2がレセプション終了後にボルロー氏を見つけたところ、足はふらふら、カメラを向けたら、何か述べたが意味不明で明らかに酩酊状態だった。このレセプションは午後8時のニュースで放映の予定だったが、没にした。同局の報道局長は、ただちに、フィルムの破壊を命令。インターネットなどにも流れないような措置を取ったという。
同報道局長はこの報道を「虚偽」と否定。その後、主要紙や週刊誌がこの局長やボルロー氏を追っかけまわしたり、周辺取材などの後追いもしていない。だから、この風刺新聞の読者とその周辺しか、この話は知らない。
もっともフランスはミニコミの世界だから、この”事件”は周知の事実になっていると思うが。
ボルロー氏夫人は同局の人気美人キャスターだったが、ボルロー氏との結婚を機会にキャスターは降りた。しかし、以前として、テレビのジャーナリストであることに変わりない。週刊誌好みの話はいろいろあるはずだし、酩酊事件はメディアにとっては絶好の機会だったはずだ。
以前、サルコジ大統領が酩酊状態でモスクワでの記者会見に登場したことがあった。サルコジ氏はアルコールはダメな体質で1滴も飲まず、好物はチョコレートといわれる。酩酊状態だったのはモスクワで乾杯のとき、ウオツカを飲まざるをえなかったかららしいが、このニュースは一旦、流れたものの、その後、このシーンはすぐ、流れなくなった。あとで、執拗にこのシーンを執拗に流して、サルコジ批判をしたところもなかった。
サルコジ氏が農業祭で、握手を拒否した男性に「このバカ、引っこんでいろ」と言ったシーンは携帯で撮影した人がいて、あとで盛んに流され、政治問題になった。これは大統領にあるまじき言動だったからだが、体質的にアルコールがダメなのに、国際儀礼上、ウオツカを飲まざるをえなかった大統領がその直後の会見で、酔っ払い状態だったのは許せる行動だったからだ。それに大統領のこうした醜態を報道しても、フランスの国益に反するだけだ。サルコジ嫌いの左派系メディアもこの大統領の酩酊状態をあげつらうところはなかった。
サルコジ政権は環境問題を重視しているので、
ボルロー氏は政府のNO2の重職にある。フランス2は、そういう人の失態をニュースで流して面白がっても、あまり建設的でない、と判断したのだろう。ちなみにこの報道局長は女性である。サルコジ大統領に最近、厳しい質問をしており、大統領から不況を買ったとのニュースが週刊誌に掲載された人である。
中川氏の酩酊会見はフランスでも流された。その時の感想は、どうして、周囲がこういう状態で記者会見に臨ませたのか、どうして周囲の人がお酒を飲ませたのか、という疑問と怒りだった。中には同級生の官僚もいたという。それなら、余計になぜ、お酒など飲ませたのか。こんなのは同級生と呼ばれる資格などないし、第一、官僚として責任を取るべきだと思った。官僚は国家に仕える、つまり国民やその代表である国会議員や大臣に忠誠の限りを尽くして仕えるのが仕事だ。それを怠ったのだから、この官僚こそ、辞任するべきだと思ったが、彼を批判、非難したメディアは、ほぼ皆無だったのが不思議だ。
中川氏がすべての責任は自分、と周囲の人間を庇っていただけに、周囲の人間の無責任ぶりにはあきれた。
中川氏は財務相、農業相としてOECD閣僚会議やジュネーブでのWTO閣僚会議に出席のためパリにも何回か出張してこられたおりにお目にかかることがあった。WTOでパリにいらしたのは、ジュネーブと東京間の直行便がないので、パリ経由にせざるをえなかったからだ。日本の役人や政治家、会社員などの中には、パリで遊んだり、買い物をするために、わざわざ他国の出張の際、パリに寄る人もいるが、そうではなかったことを明記しておきたい。勉強家で見識もあり、著書も読ませていただいたが、日本の政治家の中では、本当に珍しく知性があっただけに、あの事件は残念に思ったし、再起を期待していた。今は
謹んで哀悼の意を表すばかりだ。


by ~こめんとするあほぅ…
ストロスカーンは役者?